坐禅で何をするか
坐禅はご本尊である釈迦無二仏の姿になりきって、ひたすら坐ることにより、無の境地に至ることにあります。
坐禅のすすめ
当説明は曹洞宗宗務庁が月刊発行している『禅の友』平成22年10月号に書かれていた「坐禅のススメ」(編集部編)より転載したものです。流れの概要が掴めると思います。
坐禅に当たっての準備
坐禅堂に入る前には、清潔でゆったりとした衣服に着替えておきます。
時計などは外し、靴下や足袋も脱いで素足になります。坐禅堂内での私語は一切禁止です。
坐禅をするとき
- 叉手(左手の親指を中にしてこぶしを作り、これを胸に当てて右の手のひらで覆います)をして、坐禅堂に入ります。
坐位についたら、隣位問訊(両隣へ坐る人への合掌低頭)をします。次に右回りをし、対坐問訊(向かい側に坐る人への合掌低頭)をし、坐蒲(坐禅用の丸いクッション)に坐ります。 - 坐蒲がお尻の中心に位置するようにして、深すぎず浅すぎず坐り、足を組みます。
足の組み方には、右の足を左のももに深くのせ、左の足を右のももの上にのせる「結跏趺坐」と、左の足のみを右のももにのせる「半跏趺坐」があります。
足を組んだら左手を座蒲に添え、右手は床を押さえ、そのまま坐蒲とともに右回りをして壁に向かいます(面壁)。
両膝とお尻の三点で上体を支えるように坐蒲の位置を調整し、確実に座りましょう。
背骨をまっすぐのばし、頭を天上につきあげるような気持ちで、両肩の力を抜いて、腰に決まりをつけます。 - 手の組み方は、右手の手のひらを上にして左足の上に置き、その上に左の手を、手のひらを上にして乗せ、両手の親指の先を自然に合わせます。これを「法界定印」といいます。手は腹に近づけ、楽な形にします。
- 口を閉じ唇をひきしめて、舌先は上あごの歯のつけ根につけ、口の中に空気が篭らないようにします。
目は閉じず、自然のままに開きます。視線はおよそ1メートル前方、約四十五度の角度に落としたままにします。
上半身を数回、最初は大きく、次第に小さくゆっくり左右に揺り動かして(左右揺身)、坐相をまっすぐに正しく落ち着かせます。
形を正したら、口からゆっくり大きく息を吐きます(欠気一息)。この深呼吸を数回行い、後は自然に鼻からの呼吸にまかせます。
坐禅中
- 堂内の準備が整うと、鐘が鳴らされます。これが坐禅が始まる合図になります。
堂頭(方丈さま)が入堂して堂内を一巡し、正しい坐にあるか点検します(検単)。自分の後ろに堂頭が巡ってきたときは合掌して待ち、通り過ぎた後に再び法界定印に戻します。検単が終わると、鐘が三回鳴ります(止静鐘)。 - 一回の坐禅の時間は、一本の線香が燃え尽きる時間(一柱約40分)ですが、それ以上の長い時間にわたり坐禅をする場合、間に堂内をゆるやかに歩く「経行」が行われます。
座禅中、鐘が二回鳴ったら(経行鐘)、合掌低頭、左右揺身し、体の向きを右回りにしてもどし、組んだ足を解きゆっくりと立ち上がります。坐蒲を直し、隣位問訊、対坐問訊します。
その後、又手して、呼吸を整え、最初の歩を右足より出します。列の前後を等間隔に保ち、堂内を右回りにゆっくり、一呼吸に半歩ずつ歩いていきます。
時間になり、鐘が一回鳴る(抽解鐘)のを聞いたら、その場で足をそろえて止まり、又手のまま低頭し、右足から普通に歩く速さで進行方向に進み、自分の座位にもどり、坐禅をはじめるときと同様にして座禅を再開します。 - 坐禅中、心のゆるみを引き締めるために、警策を用います。睡魔に襲われたり、心が乱れたときなどに自分から受ける方法と、姿勢が悪かったり、眠っていたりする人に直堂(堂内を監督し、警策を行う人)のほうから入れる方法があります。
自分から受ける場合は、合掌して待つようにします。どちらの場合も、最初に直堂が警策を右肩に軽く当て予告します。合掌して首をやや左へかたむけ、右肩をあけるようにします。受け終わったら合掌のまま低頭し、もとの法界定印にもどします。
坐禅の終わり
- 鐘が一回鳴ると(放禅鐘)、終わりの合図です。合掌低頭した後、今度は両手の手のひらを上にして膝の上に置き、はじめは小さく、だんだんと大きく左右揺身します。
こうして身体をほぐした後、右回りして体の向きをかえ、足を解きゆっくり静かに立ち上がります。そして坐蒲を直し、隣位問訊、対坐問訊して又手で退堂します。
坐禅
東祥寺で行わせて貰う坐禅について、概略の手順をお話します。ここでは坐禅を行うだけでなく、手順の全般について参禅する私たちが主体的に進めることが出来るように、考慮されています。坐禅会は月1回最終日曜日の午後2時から開始されます。
坐禅の手順
坐禅の手順は東祥寺での坐禅の例です。細かい作法については、それぞれ異なる場合がありますので、その道場の作法に従ってください。
- 梵鐘を鳴らす
- 梵鐘とは境内の鐘楼などに吊るしてある大きな鐘。梵という言葉は清浄を表わします。
- 梵鐘を鳴らすのは坐禅会開始の合図です(参加者が毎月交代で撞く)
- 鐘はゆっくりと9回撞きます。最初の7回を大きく、8打目は小さく、最後に間を置かず大きく撞きます。
- 般若心経を読経
- 鐘がなり終わった時点で、参加者は靴下を脱ぎ、腕時計・携帯電話なども身体から外しておきます。
- ご本尊の前で手を合わせ、三拝します。
- ご住職の先導で般若心経を読経し、回向をします。
- 般若心経の開始・途中・終了時などに鳴らす木魚・鐘など鳴らしものも参加者が打ちます。
- 読経と回向が終われば、再度ご本尊に手を合わせ、三拝します。
- 坐禅堂へ入堂
- 叉手(シャシュ 左手の親指を中に拳骨に握り手の甲を前方に向け、その上に右手の平を重ね、ミゾオチのあたりに置く)して、右足からユックリと歩きます。
- 入堂する際は、左側の柱・襖・障子側を叉手して、左足から入ります。畳の縁は踏まないように気をつけます。
- 坐禅準備1(合掌低頭)
- 自分の座位(単という)に合掌のまま頭を低くします(隣位問訊)。
- 次に合掌のまま回れ右をして、頭を低くします(対坐問訊)。
- 坐蒲(ざふ)に腰を下ろし、右に身を転じ壁に向かう(面壁メンペキ)
- 坐蒲とは、坐禅を行う際尻の下に敷いて坐相を安定させる法具。直径約34cm、高さ約10cmの円形で、内部にはパンヤが詰めてある。
- 坐禅準備2(足の組み方)
- 代表的な坐り方には結跏趺坐と半跏趺坐の2種類があります。
- 『結跏趺坐』は、右の足を左の腿の上に乗せ、左の足を右の腿の上に乗せて坐ります。
- 『半跏趺坐』はどちらかの足を反対側の腿の上に乗せるだけの坐り方です。
- 膝が浮かないようにし尾てい骨と両膝で作った正三角形の中心に重心が落ちるようにすることが大切です。尻を後ろに引いて下腹を前に出すようにすると落ちついた坐り方になります。
- 結跏趺坐、半跏趺坐がやりにくい場合は正座も許されます。
- 膝が痛いなど、坐ることが難しい場合、椅子による坐禅も可能です。
- 坐禅準備3(手の位置)
- 法界定印(ホッカイジョウイン)を結びます。右手のひらを組んだ足の上に置き、左手のひらを重ねて親指の先をかすかに接触させます。
- 坐禅準備4(眼の位置)
- 眼は常に開いておき、閉じてはいけません。視線は約1m先に宇宙への入り口を感じながら45度下に視線を落として半眼状態でいます。
- 坐禅開始の合図
- 坐禅の始まりの合図は木版の音と鐘の音です。
- 木版(モッパン)は、板(ハン)とも呼ばれ、坐禅などの行事が開始されることを、槌で打ち鳴らして告げる。方丈や僧堂の前などに吊るしてかける。(参禅者が毎月交代で打ちます)
- 木版の打ち方は中音、中音、中音、強い音(タン)、強い音(タン)、徐々に早く連打し、最後に一拍おいて大きな音で留めます
- 坐禅始まりの鐘は止静鐘(シジョウショウ)と呼ばれ、三回鐘を鳴らします。(参禅者が毎月交代で鳴らします)
- 1柱目坐禅開始
- 1本の線香が消えるまで(1柱イッチュウ)約30分坐禅を行います
- 上体の状態(調身)
- 坐蒲の上に尻を置き、坐を組み、衣服を整え、腹を前に突き出すようにし、鼻先が臍の真上に意識して、まっすぐに背骨背筋を伸ばします。
- 上体を振り子のように大から小へゆすりながら徐々に体を安定させてゆきます(左右揺身サユウヨウシン)。
- 腰に決まりをつけて、頭で天を突き上げるようにして顎をひき、両耳が肩の真上にきていることを意識して、両肩の力を抜いて、前後左右に傾かないようにします。
- 呼吸のしかた(調息)
- 姿勢(身)が整ったら、口は唇を引き締め、舌先を上歯のつけ根につけて静かに大きく深呼吸を数回します。(欠気一息ケッキイッソク)
- 徐々に下腹丹田に気を満たす腹式呼吸へと移行し、鼻息にて通ずるにまかせます。
- 胸、下腹を凹ましながら、全身の細胞の不浄の気をハァーーと、頭の先から首肩腕指先胸腹脚足先へと感じながら吐き出し、心の荷物や見えない肩の荷も共に降ろすと感じながら、搾り出します。
- 吸うときは遠くのほうから清らかな白い霧のような霊気をゆるゆると鼻から下腹へ一杯に満たします。
- 全身の毛孔からも霊気が浸透してゆくと感じ、瞑想します。
- 心を軽く穏やかにすると無我の境地、悟りの境地に近づくことができます。
- おだやかな心(調心)
- 眼に映るものにも、耳に聞こえる音にも、鼻に匂う香りにも、さらに心に浮かぶさまざまな思いにも、うつりっ放し、聞き入れっ放し、においっ放しにして、それらに一切引っ張られず、些かも相手にしないことが肝要です。
- それでも心乱れるときは、吐く息と吸う息でひと〜つ、ふた〜つと数え、吐く息に集中しながら息を百まで数えましょう。
- 座禅中、住職より、仏に関する講話(法話)を頂きます。
- 1柱目坐禅終了
- 経行が始まる合図として経行鐘(キンヒンショウ)が鳴ります。経行鐘が鳴ると、1柱目坐禅が終了します。
- 経行鐘として、鐘を2回弱く小さく鳴らします(止静鐘を鳴らした参禅者が担当します)。
- 経行(きんひん)
- 歩く坐禅といわれる坐禅を経行といいます。
- 合掌低頭し、左右揺身したた後、坐禅の組み足を解いて、右回りして立ち上がり坐蒲を直します。
- 隣位問訊と対坐問訊をします。
- 叉手してゆっくり一息吐いて吸ったら、半足(半歩)づつ右足より右回りにて進めます。
- 肩、顎、口、眼は座禅の時と同じです。
- 経行終了
- 経行が終了する合図として抽解鐘(チュウカイショウ)が1回鳴ります。抽解鐘が鳴ると、が経行が終了します。
- 抽解鐘を聞いたら、直ちにその場に両足を揃えて止まります。
- 叉手のまま低頭し、普通の歩速で進行方向(右回り)に進み、自分の坐っていた場所に戻ります。
- 隣位問訊と対坐問訊をした後、2柱目の坐禅に入ります。
- 2柱目坐禅
- 2柱目坐禅は1柱目坐禅と同様に行います。
- 座禅中に、 普勧坐禅儀を3回に分けて詠みます。
- 坐禅終了すると引き続き、経行に入ります。東祥寺坐禅会では坐禅は2柱、経行は1度行います。
- 坐禅終了の合図
- 木版を槌で打ちます。(開始の木版を打った参禅者が担当します)
- 木版の打ち方は次の通りです。
- 中、中、小、大 中、中、中、中、中、中、中、タン、タン、徐々に早くタ、タ、タ、タ、大 中、中、中、中、中、タン、タン、徐々に早くタ、タ、タ、タ、小、大 中、中、中、タン、タン、徐々に早くタ、タ、タ、タ、中、小、大
- 次に放禅鐘(ホウゼンショウ)として鐘を1回鳴らします。(止静鐘を鳴らした参禅者が担当します)
- 木版が鳴り(解静)、放禅鐘が鳴ると坐禅は終了となります。
- 坐禅終了
- 合掌低頭した後、今度は両手のひらを上にして膝に置き、最初とは逆にはじめは小さくだんだん大きく左右揺身をします。
- 体をほぐした後、足を解き右回りで向きを変えます。
- 立ち膝になって、座蒲を元の形に直します。
- 直し終わったら立ちあがり、隣位問訊と対坐問訊をして叉手で左回りで退堂します。
- 退堂する際は、右側の柱・襖・障子側を叉手して、右足から出ます。